動物を描こう!~骨格や筋肉から学ぶ動物の共通点~
カテゴリー: イラスト
皆様どうも、はじめまして。 CG事業部の蜥蜴の尻尾と申します。 今回は、動物やモンスターなど人間以外の生き物を描きたいけど何から学んだらいいのか分からない…という方向けの記事です。勉強の足掛かりとして個人的に良いと思っております、「生体構造の見方」について紹介いたします。
骨格や筋肉には共通点がある
キャラクターを描きたいと思った時、あなたは何から勉強しましたか?
目指す画風など様々な要素で変わってくるかとは思いますが、多くのサイトや書物の中で「骨格」や「筋肉」など「解剖学」に触れた描写はありませんでしたか?
動物の場合も同様で、骨格と筋肉を理解しているとその動物らしさが表現しやすくなります。
パッと見では動物それぞれで違うじゃん、まさか描きたい動物全部研究しろってか!!と思われるかもしれません。正直、そうなんです。どうしてもそれは避けられないんです・・・
が、こと脊椎動物(背骨のある生き物)に関しては、人間など他の脊椎動物との共通点を知ることでグッとイメージしやすくすることができます。
例えば、人間の関節がどこでどう曲がるか、などはすぐにイメージがつくと思います。(なんならその場で確認もできますしね。)そういった、既に知っている、もしくは調べやすい情報に近づけることで、勉強の敷居を下げてしまおうという作戦です。
今回の記事では、
・骨格で分かる手足の関節の順序
・筋肉のつき方に見られる人間と他生物の共通点
この2点について解説していきたいと思います。
関節の順序はどの動物も同じ
では早速見ていきましょう。
とりあえず色んな動物のスケルトンモデルを用意してみました。
今回比較に用いるのは脚です。
上記のスケルトンモデルの左足をパーツ毎に分けて着色してみました。
動物の脚は、関節を挟んで腿、脛、踵、爪先の4つのパーツで構成されているのがわかると思います。
そして、その順序および関節の曲がる方向はどの生物でも同じで、それぞれの長さ太さによってシルエットの特徴が作られていると言えますね。
(鳥の脚も、膝が逆に曲がるのではなく、踵が膝に見えるような位置にあるんですよね。)
人間からしたら、爪先立ちしているような状態の動物が沢山居るというのは大きな特徴になると思います。
描こうとしている動物のある関節が人間ではどの部分にあたるのか、これが分かるようになれば、後述の筋肉だって人間ならどの部分にあたるのかが分かってしまうのです。
個人的に一番わかりにくい動物は馬です。
走っている馬の写真を見て人間で再現したらどんな姿勢になるのか、イメージできたらあなたはもう関節マスターです。
それでは、筋肉の話に移りましょう。
手足の筋肉も大まかな配置は同じ
続いて、筋肉のお話です。
筋肉はイラストにおいてもシルエットに大きく影響する、目に見えて重要な要素です。
上記のスケルトンモデルを見て頂ければ分かります通り、動物のシルエットは幅広いです。
その輪郭に差異があるということは、輪郭を作る筋肉は完全には同じではないと言うことです。では共通点としては何処に着目すれば良いのでしょうか。
とりあえず一例を見てみましょう。
左が人間の脚、右が犬の脚です。
大雑把にですが筋肉の束とその名前を描いてあります。本当はもっと複雑ですが…
骨と比べて組成が複雑になり、輪郭が異なるだけあって一見全然似ていないように思うかもしれません。
同じ名前の筋肉だけで構成されている…というわけでもなく、どちらかにしかない筋肉すらある始末。この図は簡略化してありますので、詳細に見たらさらに違いがあるという事でもあります…
正直に申しますと、詳しく調べるとキリが無いくらいに「固有の特徴」は出てきます。
冒頭でも述べたとおり、全てを調べて把握するというのは大変難しい作業になります。動物の種類によっては資料すらまともに見つからないものも多いでしょう。
なので、本題通り共通点を見出して簡略化していきましょう。
図のように、人間と犬で比べても共通する筋肉が結構多いことがお分かりいただけると思います。
また、名前は違っていても同じ色をつけられた筋肉同士は似たような配置にあることが分かるかと思います。具体的には別物であっても、それらの筋肉が持つ役割が同じであるという事です。
ここで、犬だけでは分かりにくいのでイグアナの脚も追加してみましょう。
筋肉の膨らみに着目してください。腿とふくらはぎ、人間とそっくりではありませんか?
イグアナはバランスが人間に近く分かりやすいので例に挙げましたが、イグアナに限らず筋肉も骨と同じでそれぞれ同じような役割を持つ筋肉の太さ長さの違いでシルエットの違いが作られていると言えますね。
似たような役割の筋肉が似たような配置にあるという事は、シルエットに影響する筋肉の膨らみの位置も共通している、という事です。
人間の筋肉構造を知っていれば、描きたい動物の輪郭に合わせて変形させるだけである程度正しいイメージが掴めてしまうというわけです。
各動物の解剖図を見つけるのは大変ですが、情報量の多い人間の知識も応用することで、資料の不足を補うことができます。
もちろん、骨と同様に生き物の種類によって発達度合いに違いがありますし、犬や鳥のように筋肉がシルエットにあまり影響を与えていない場合もあります。
そういった部分を確認するためにも、生きた動物の写真くらいは資料として用意しておきたいですね。
資料を用意したうえで確認として頭に筋肉構造をイメージしながら描いていただけると、よりリアルで正確な動きや姿勢をイラストに表現できるのではないでしょうか。
実際に描いてみよう
さて、図を用いた説明だけでも面白くないですし、上記の内容を用いて一枚絵を描いてみましょう。
今回例に挙げるのは、小型の獣脚類であるコエロフィシスという肉食恐竜です。骨格といえばやはり恐竜ですよね!
※個人の見解です。
折角骨格の話をしましたので、ラフに基礎的な骨格と先ほどのパーツ分けに基づいた色分けをしてみました。
黄色の部分は、次回説明します「恐竜固有の特徴」に当たる部分ですので、今回は気にしなくて大丈夫です。
筋肉もシルエットになってこのラフには描かれていますね。
さて、恐竜という動物。現在見ることが出来る彼らの姿は「化石標本」か「CGなどの映像」の2択しかありません。映像を作った人達も、彼らの生きている姿は見たことがないはずです。
筋肉の構造は化石としては残りませんので、彼らのシルエットは実は想像上のものでしかないのです。
どうやってシルエットを想像したのか。それは先ほど説明した他動物からの類測です。
このイラストで描かれた腕や脚の膨らみも、ほとんど人間のそれと同じ部分をバランスよく見えるように膨らませているだけなのです。
◆復習
・色分けされた脚の関節は人間や他の動物と同じ順序で、同じ方向に曲がっている。
・腕ももちろんそのルールに基づいている。
・筋肉のふくらみが出来る位置も多くの動物で共通している=人間の構造を流用できる。
完成したイラストがこちら。
やはり全体の印象としては人や哺乳類などとは似ても似つかない動物に見えるかと思います。
それでも、他の動物と共通する仕組みを持っておりその知識を流用することで少しの勉強でも自然な体系やポーズの表現が可能になります。
ただし、脊椎動物の多くに共通する箇所があれば、逆にその動物にしかない、「特徴」になる箇所も存在します。むしろ、その動物にしか無い特徴こそがイラストを見る人にその動物が何であるかを理解させるポイントになります。
イラストを描く上では、その動物らしさを出すために固有の特徴を押さえることが必要です。
じゃあ今までの話はなんだったのよという話ですが、骨格や筋肉というのは基礎です。応用は基礎の上に成り立つという言葉の通り、共通点…すなわち生物学的な目線で見た動物の基礎を理解することで、その上にある特徴を表現できるようになるのです。
今回の骨格と筋肉に関しましても、人間の知識の流用では限度がある部位があります。
ズバリ、胴、特に腰です。
脊椎や肋骨、腰骨のパーツなど構成要素は同じなのですが、体を垂直にする人間と体を平行にする多くの動物では、かなり異なる形態をしています。特に腰は、皿状の骨盤を形成する人間が特殊なだけに、骨格は似ても似つかない形をしています。さらに腰には大量の筋肉が複雑にくっついていて様々な挙動をとるのですから、別途勉強の必要が出てきます。
形で言えば頭部もそうですね。
知識を流用できる個所と、個別で勉強の必要な特徴。この2つをうまく見分けることで、効率よくイラストに落とし込めるようになると思います。
動物それぞれにおける特徴は本当に多岐に渡りますので、次回、今回の恐竜を使って具体的な特徴の見つけ方を解説していきたいと思います。
また、空想上の動物やモンスターを描く際にも、これらの知識を応用することで印象を変えることができます。
あえて人間寄りな骨格をした少年漫画の強キャラみたいなドラゴンもいれば、中世の絵画のような生々しいトカゲ骨格のドラゴンもいたり…といった具合です。
この場合、基礎にあたる知識だけで描きたいモンスターの特徴づけが可能ということになります。
機会がありましたら、今回の内容を踏まえて想像上の動物に関するお話もできたらと考えております。
まとめ
今回お話させていただきました、動物の基礎こと骨格と筋肉の共通点まとめです。
◆骨格や筋肉の共通点と注意点
・関節の順序や向きは殆どの脊椎動物で共通
・付属する筋肉も、同じような役割を持つものが同じような位置についている事が多い。
・共通点を見出すことで、調べる時間の短縮や資料不足時のフォローができる。
・他の動物(想像上の生物を含む)に知識の応用が効く。
・各動物固有のパーツや各パーツ内の細かい特徴を見つけやすくなる。
・人間とその他の動物で大きく異なる箇所(腰など)は別途勉強が必要となる。
学業も基礎が大事と言われているのと同じで、技術が多少ついてくると尚のこと基礎基盤に立ち返らなければならないことなども増えてきます。(経験談)
動物イラストを始めたいと思った際にはぜひ、表面だけでなく内部から動物を学び、イラストで再現する楽しさを感じていただけたらと思っております。
それではまたの機会にお会いしましょう。
最後まで閲覧ありがとうございました。